我々はスタビライザーの音も大なり小なり聴くことになるんです
HONDA:そんなにデリケートな仕組みだったのか・・・
荒川:外的な振動要因のひとつに、スピーカーからの床振動はひどくなるとハウリングという共振現象となって「ボー」という音がスピーカーから発せられることがあります。ただ、これはレコードプレーヤーをしっかりとした台に置き、振動を減衰させるインシュレーターを介して設置することで防ぐことができます。プレーヤーそのものでおこる問題はモーターやプラッターの回転振動です。レコードが回転する以上、振動は多かれ少なかれ発生しています。この回転振動を減少し、音質を向上させるのがレコードスタビライザーの役割です。
HONDA:おさえつけることで振動をなくすということですか?
荒川:理屈を単純化するとそういうことになりますね。ただ実際のところは、スタビライザーは振動を抑制しつつも、振動を受けたスタビライザー自らもわずかではありますが、固有の振動を発しています。つまりスタビライザーの音が再生音に乗ってくるのです。
HONDA:え、スタビライザーに音があるんですか???
荒川:そうなんです。スタビライザーが無いよりはあった方が音は良くなることが多いのですが、と同時にあればあったで、我々はスタビライザーの音も大なり小なり聴くことになるんです。重いスタビライザーは音もどことなく重くなるし、軽いスタビライザーは音も軽やかです。スタビライザーの材質は、金属、木、石、カーボン、ゴムなど様々で、その重さや組み合わせによってスタビライザーそれぞれ固有の振動があり、各々音質傾向があり、どれが好みかは人それぞれだったりします。
STB-EPの目指した音は、万人受けする中庸な音作りです
HONDA:そこは意識したことなかったですね。そんなにたくさん聞き比べたこともないですし。この「STB-EP」は真鍮とおっしゃってましたが、特徴はどんな感じなんですか?
荒川:真鍮はオーディオ製品や楽器でも多用されているオーソドックスな素材ですが、耳につくような嫌な響きがしません。また重さも重要で、「STB-EP」は130g。スタビライザーとしては軽量級の部類です。誤解を恐れずに言えば、「STB-EP」の目指した音は、万人受けする中庸な音作りです。
HONDA:スタビライザーとしては重い方がいいような気がしますが・・・
荒川:この程度の重さが、音を変に押さえ付けることなく、適度な振動抑制効果もあって、靄付いていた音が晴れやかになり、音場感豊かに、音も伸び伸びと軽やかになるんです。また、軽量級である事は、”LINN/LP-12”に代表されるフローティングサスペンション型レコードプレーヤー、あるいは爆発的人気の”ion audio・Archive LP”のような造りが華奢なプレーヤーでも使用できるという利点があります。
HONDA:これからレコードをはじめる人や、なにより女の子にも人気な機種ですね。
荒川:これらのプレーヤーに重量級のスタビライザーを乗せると、プラッターが沈み込んで使えない、重量に耐えきれず回転できない、といった不具合が生じやすいのですが、STB-EPならば、どんなプレーヤーであっても、その動作を妨げることはありません。加えて、「STB-EP」は高さ27ミリと低いので、カバーを閉じた状態でもカバーにあたることなく使えるのも嬉しいでしょ。
HONDA:利便性の面でも考え抜かれていますね。
荒川:従来のレコードスタビライザーが一般のレコードファンに今ひとつ浸透しない理由の一つに、その大きさと重さがあると思います。レコードスタビライザーってほとんどが大きて重くて、扱いづらいでしょ。
HONDA:確かに大きくて置き場所に困ったりしそうです。
荒川:最初は使っていたけど、だんだん面倒くさくなって、やがて使わなくなってしまったというレコードファン、オーディオマニアは私だけではないはずです。