かっこよく言うと、僕の作家性の延長にあるデザイン、です


HONDA:この曲線はSTB-EPの特徴といえる、独特のかたちですね。

荒川:僕の祖父が洋画家なんですよ。その影響もあって、自分も若かりしこと造形作家を目指して数々の立体造形を製作、発表していた時代がありまして。

HONDA:それは初耳です。

荒川:そうでしょうね、どこでも言っていませんから(笑)。僕が傾倒していたのはサルバドールダリに代表されるシュールレアリスム派で、自分の作風もそれを反映した、ユーモラスで、生命を連想させる、有機的で滑らかなフォルムを持った作品が多かったですね。

HONDA:じゃあ「STB-EP」のデザインは、

荒川:かっこよく言うと、僕の作家性の延長にあるデザイン、です。

HONDA:かたちもですが、「STB-EP」は手に持ったときの手触りも絶妙だと思います。

荒川:手触りと重さにもこだわっています。「STB-EP」は初期段階、加工性と表面処理の容易さからアルミニウムの削り出しだったのですが、途中から真鍮削り出しに変更しました。なぜかというと、どれだけ表面処理を試みてもアルミニウムでは手触りの質感が乏しく、また比重も軽すぎて、理想とする”音に良いベストな重さ“に至らなかったのです。

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HONDA:材質の違いが手触りと大きな関係があるんですね。重さについてもう少し詳しく伺えますか?

荒川:単純に質量が軽いんです、アルミだと。持ったときの重量感が軽すぎてダメ。そこでマテリアルを真鍮に替えたんですが、全部真鍮だと今度は重すぎるので、真鍮内部の空間をコントロールし、質量をベストなバランスにしました。

HONDA:荒川さんがはじき出したベストな重さというのは、何グラムなんでしょう?

荒川:その重さは130g。これが“音に良いベストな重さ”なんです。さらに、表面に熟練のバフ掛け職人による徹底的、且つ丁寧な鏡面仕上げを施し、その上にクロームメッキを施すことで、理想とする極上の手触りと質感を実現したのです。

HONDA:ピカピカですよね。見た目も手触りも所有欲をくすぐります。

荒川:STB-EPは手に持った時、ひんやりと心地よい冷たさが感じられるでしょう。これもSTB-EPに愛着が湧く要因なんです。真鍮は熱伝導性が高いのでしばらく持っていると手のぬくもりがアダプターにも伝わって、心身一体のように思えてくるんですよ。音楽は耳だけでなく、見て触って楽しむものでありたいのです。


世界中のレコードプレーヤーを全て水平にして、レコードを良い音で聴いてほしい


HONDA:試作の段階から、”水準器”というワードが出ていました。このライトブルーの水準器を搭載したことには一体どんな理由があるのですか?

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荒川:レコードプレーヤーは水平でないと良い音が出ないんです。意外と見過ごされがちなこの事実を、私は「STB-EP」を通じて、世の中のレコードファンに知ってほしかったんです。極端な話、私が「STB-EP」をつくったのは、世界中のレコードプレーヤーを全て水平にして、レコードを良い音で聴いてほしいからなんです。

HONDA:世界のレコードプレーヤーのうち、水平に設置されているのは何割くらい?というより、世のレコード愛好家のうち、どのくらいの人がレコードプレーヤーを水平に設置することに意識を向けているか見当もつかないです。僕も水平な方がいいんだろうな、とは思うんですけど、特に針が滑らなければ水平であるかないかは、そんなに気にしてないですし。

荒川:レコードプレーヤーが水平に設置されていないと、トーンアームの挙動が不安定になって音像がぼやけたり、定位が定まらなかったりします。極端に傾いていると、傾いている方にトーンアームが揺さぶられてしまいます。そうすると、左右の音溝のどちらかに偏ってカートリッジの針先が強く当たってしまい、ステレオ再生の左右のバランスが崩れ、最悪の場合、音が途切れるなんてことも。そんな状態で長年レコードプレーヤーを使っていると、カートリッジの針先が偏って磨耗し、レコード盤の音溝も過度な摩擦で傷んでしまいます。

HONDA:なんだか怖い話ですね・・・

荒川:レコード再生は突き詰めると色々な調整箇所があって、高額なレコードプレーヤーになればなるほど調整箇所が増えて扱いが難しく、気軽にレコードを聴きたいレコードファンからは敬遠されがちです。そして多くのレコードファンは、エントリーからミドルクラスのレコードプレーヤーで楽しんでいると思います。

HONDA:そうでしょうね。我が家のプレーヤーもSL-1200 mkIIIですし。そういう人は多いと思います。

荒川:SL-1200シリーズは針圧やスケーリングなどの調整箇所がありますよね。でもこれよりも入手しやすいクラスのレコードプレーヤーは調整箇所も少なく、箱から出してポンと置けば、それなりの音を出してくれます。聴く側も面倒くさいセッティングは、せいぜい針圧の調整くらいに留めておきたいのではないでしょうか。なかには針圧の調整機能すら無いレコードプレーヤーだってあるんですから。では、レコードプレーヤーのセッティングで、誰でもできて、しかも最低限やるべきことは何だと思いますか?


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