楽器用で定番の1芯TSフォンケーブルを作ってみよう
ギターやベース、その他シンセサイザーなどの楽器類でよく使われるTSフォンケーブルを作ってみましょう。
よくこれらの楽器の嗜む方の間では "シールド" という俗称で呼ばれているものです。
通常1芯や2芯のシールド線から作られることが名前の由来ですが、今回はオヤイデ/NEOオリジナルの1芯シールドケーブル、Ecstasy Cableを使ってみます。
勿論プラグ付きの完成品が非常に優れたケーブルではありますが、作例は自作ならではのメッキの違う、少しコストを抑えた構成にしてみました。
今回使用する部材
・OYAIDE/NEO Ecstasy Cable 3m
・Amphenol ACPM-RB-AU L字型金メッキTSプラグ
・Amphenol ACPM-GB-AU ストレート型金メッキTSプラグ
用意する工具

・HOZAN N-838 ヘビースニップ (もしくは同等に金属用にも使えるはさみ)
・ペンチ
・ニッパー(金属用)
・ピンセット
・テスター (音でチェックできる機能のものが好ましいです)
・はんだごて (高めの温度が細いこて先で使えるもの推奨)
・はんだ
・バイス (各プラグ固定用)
作業手順
※製作にあたり個人の責任で行ってください。

ストレートプラグのハウジングを外し、またL字型はもともと外れた状態で販売されているハウジングを、それぞれケーブルの両端から反対向きに通します。
今回、作例ではAmphenolプラグ付属のゴムブッシュにギリギリ入ったため付けたままで作っていきますが、プラグの個体差やケーブルの公差によっては通らない場合も考えられるため、きつい場合は無理せずゴムブッシュを外して通しましょう。

次にプラグ付属の透明な絶縁体を通していきます。
ただしAmphenolのプラグはハウジングは共通ですが、中に通す絶縁体はL型とストレート型で形状が異なります。今回は楽器側がL、接続先側がストレートのL-S形状で作りたいため、ケーブルの印字の頭側(Ecstasyの文字があった場合の"E"側)にL字用の絶縁体を、印字の末尾側(Ecstasyの文字があった場合の"y"側)にストレート用の絶縁体を通します。
各パーツを通し終えたら、はんだ付け前のケーブル加工をしていきます。
まずはわかりやすいストレート側からやっていきましょう。
写真を参考に、先端をホット側の中程に合わせ、そこからクランプまでの長さおおよそ13mmほど外側の被覆を剥きます。
作例としてあくまで参考として具体的な数値を載せてはいますが、剥く長さに関してはプラグと照らし合わせながら決める方が確実です。

編み込まれているシールド線をテスターの先などの細い棒状のもので丁寧にほぐし、1か所に束ねます。
ここで、楽器用を謳われているケーブルでは、写真のように芯線の周りに黒く薄い層がついていることがあります。
その場合の多くはカーボンなどを含有した導電するPVC層、つまりはシールドの補助的な役割をする層のため、薄く刃を入れてこの層を芯線から取り除いておきます。ここを剥かずにはんだ付けをしてしまうとホット側と触れてしまうなどしてショートして音が出ないなどの失敗の原因にもなります。
芯線を5mm程剥きます。今回のケーブルのように芯線の絶縁体が比較的太いケーブルはあまりギリギリの長さで剥いてしまっても後々はんだ付けしづらくなるため、やや長めに剥いてしまって大丈夫です。


今度はL字プラグ側を剥いていきます。
写真を参考に端をL字プラグのねじ切りの端あたりに合わせ、そこからクランプまでの20㎜程を剥き、ストレートと同様にシールドをほぐして束ねます。

また、黒い導電PVC層もストレート同様取ります。その後芯線を5㎜程剥き、写真のような位置関係に加工ができていればOKです。
そしてL字側は剥く長さが長い分、シールドの束が長くなってしまっているため半分くらいで切ってしまいましょう。
これでケーブルの両端の加工は完了です。


次に、各部分に予備はんだを行っていきます。
予備はんだとは、ケーブルを任意の場所にはんだ付けする前に、ケーブルにあらかじめはんだを染み込ませる、
またはプラグ側のケーブルを付ける位置にあらかじめはんだを盛っておくことを指します。
これによりはんだ付けを行う際に、銅線の束がなるべく崩れることなくあてがうことができ、作業がしやすくなります。
まずはケーブルに予備はんだをします。加工したケーブルの端をバイス等で固定し、束ねたシールド線・むき出しの芯線ともにはんだごてをはんだを素早く当てて各線束にはんだを染み込ませます。この時、元々の線束よりなるべく太くならないように染み込ませるようにします。
はんだがどこかで塊になってしまったり、うまく浸透しない場合ははんだの溶ける温度に対してはんだごての出力が足りなかったり、はんだごての先が劣化しすぎている場合がありますので、きちんとはんだごてのスペックと状態はチェックしましょう。

プラグ側にも予備はんだを行います。まずはストレート側です。
各はんだ付けをする見込みの部分にはんだをあらかじめ盛っていきます。ホット側は見てのとおりですが、コールド側は今回突起が出ている部分のすぐ前あたりに盛ります。
このとき、写真を参考にはんだを流し込み過ぎないようにしましょう。流し込み過ぎて塊になってしまうと、この後はんだ付けを行う際に溶けるまでに時間がかかり、熱の加え過ぎでケーブルの絶縁体が溶けてしまったり、プラグの絶縁体が変形してしまう、といった失敗に繋がります。
ここでもなだらかな形にならず、はんだが丸く塊になってしまうとしたら使用されているはんだに対してはんだごての出力そのものが足りていなかったり、こて先が劣化しすぎてしまっている可能性があります。

L字プラグ側も同様です。
コールド側の突起のすぐ前あたりと、写真を参考にホット側の斜めに起き上がっている部分にはんだを盛ります。
これで各部分の予備はんだは完了です。
いよいよはんだ付けをしていきます。まずはストレート側です。
プラグのクランプ部分をペンチなどで開き、ケーブルをあてがえるようにしてから、プラグをバイス等で固定します。
利き手にはんだごて、逆の手でケーブルを持ち、プラグのコールド側に盛った予備はんだとはんだで固められたシールドの束を重ねるようにしてあてがいます。そして重なった部分にはんだごての先をあてて熱を加え、プラグを線のはんだを両方溶かしてはんだ付けします。
予備はんだ段階の写真くらいの量を盛れていればはんだを足さずにきちんと付けきれます。
ここで、ストレートプラグの時のはんだ付けでやりがちなミスを作例でもやりそうになったため共有しておきましょう。
ストレートプラグや、ホットとコールドのはんだ付け部分が似たような配置のプラグで起こりがちなのですが、これらの電極は非常に近い場所にあるため、図のようにコールド側の線が伸びてきていたり、はんだを多く盛ってしまったりするとホットの部分とくっついてしまってショートしてしまうことがあります。
そのため、はんだの量はなるべく少なく、他の場所へつかないよう気を付けながら行いましょう。

コールド側のはんだ付けの後にホット側のはんだ付けを行います。
利き手にはんだごて、逆の手でピンセットを持ち、芯線を固定しながらコールド同様プラグにもったはんだと芯線にしみたはんだを重ねて溶かすようにしてはんだ付けします。

L字プラグ側も同様にコールド→ホットの順ではんだ付けします。
こちら側はホットのはんだ付け部分が跳ね上がっているためくっついてしまう心配はそれほどないと思います。
はんだ付けがちゃんとできているか不安であれば、ここまでの段階ではんだ付けした部分を指で押したり、ケーブルを軽く動かしたりしてみましょう。正しくはんだ付けできていれば、多少の力を加えた程度でははんだ付けが外れたりはしません。
はんだ付けも問題ないようであれば、プラグのクランプをペンチなどで閉じます。
単に挟むだけだと飛び出たような形になってしまう場合もあるため、なるべく丸い形に閉じるよう少しずつ角度を変えながら閉じるとよいでしょう。
また、ここでクランプが一番外側の被覆をしっかり噛むことができればちゃんとした耐久性を確保できます。

クランプを閉じたら、絶縁体を通し、ハウジングを閉じます。
写真のように、絶縁体がゆがんだりせず、筒状の中にすべて収まっていれば上出来です。


L型の場合は絶縁体の突起がホットのはんだ付け部分を覆うような形で通し、その上から曲がっている部分の分割ハウジングを付けます。その後同様にハウジングを閉じれば作業完了です。
これで一通りの加工は完了しましたが、最後にはしっかりとテスターで導通を確認しましょう。
プラグのチップ(Tip=絶縁体の線があるより先端のダイヤ型の部分、ホット側)どうし、スリーブ(Sleeve=絶縁体の線があるより奥側の筒状の部分、コールド側)どうしが導通していること、またチップとスリーブの間は導通していないこともきちんと確認しましょう。

テスターによるチェックでも問題が無ければ完成です。
