凛として時雨ドラマー ピエール中野がリケーブル

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超絶な人気を誇るスリーピース・バンド「凛として時雨」のドラマーであり、サブカル的な独自の視点を持ちDJ活動など幅広い活動でも知られるピエール中野氏。 今回Song’s-AudioからのMMCXタイプ4機種の発売に際して、ULTIMATE EARSのTF10/UE900のユーザーでもあるピエール中野氏に、ドラマー/ミュージシャン/DJの視点からのインプレッションを伺うべく、2013年4月29日のZepp DiverCity Tokyoから始まり6月28日の日本武道館公演でファイナルを迎える、「凛として時雨TOUR 2013 “Dear Perfect”」のリハーサル直前のスタジオを訪ね、愛用のULTIMATE EARS UE900をリケーブルした際のサウンドの変化について感想を語って頂いた。


試聴環境: <プレイヤー: APPLE iPhone 4S> → <各リケーブル> → <ULTIMATE EARS UE900>


担当Y (以下Y) :宜しくお願いします。ではまず、純正のケーブルで聴いてみてください。

ピエール中野(以下P):はい。普段UE900はこの買った当時のまんまの状態で使っています。コントローラーが付いている方のケーブルですね。


[ピエール中野、純正ケーブルで聴く]


P:ハイ。イイ音ですよね(笑)UE900_pic1.jpgULTIMATE EARS UE900

Y:(笑)ハイ。そのままでもイイ音です。聴いていた音源はLUNA SEAですか?

P:ええ。嵐とPerfumeとLUNA SEAを聴いてみました。ポップスとテクノとロックで。

Y:わかりました。では早速リケーブル行ってみましょう。まずはコチラのGALAXYから聴いてみてください。

P:はい。これ見た目がいいですよね。



[ピエール中野、GALAXYにリケーブルして聴く]


純正ケーブルのちょっとモワッとした感じが無くなって音が抜けてくるようになりました。激しい曲よりは綺麗に音を聴かせるような楽曲に対して凄く合いそうな印象です。(GALAXY)

P:はい。あのー、ハイ(高域)が抜けてくるのと、綺麗になってスッキリしますね。純正ケーブルのちょっとモワッとした感じが無くなって、音が抜けてくるようになりました。特に、ギターとストリングスがいい音に感じる、という印象でした。

Y:なるほど。ヴォーカルの変化はいかがでしたか?

P:そうですね、比べてみると声も高域の伸びがすごく綺麗に出ているような気がします。

Y:では全体的に高域のキャラクターが強く出ている感じですかね。PN_galaxy_300.jpg

P:そうですね。かと言ってロー(低域)が失われているということは無くて。とにかくスッキリしてハイが綺麗に出てくる所に特徴があったと思います。

Y:ピエール中野さんの楽器でもある、ドラムのサウンドバランスの変化は感じられましたでしょうか?

P:もしかしたらですけど、ちょっとスッキリし過ぎちゃってて、物足りなく感じる人がいるかも知れないですね。うーん、そんな感じはあるけど…今ロックとテクノと、いわゆるポップス、いろんな音が入っている音源を聴いたんですけど、中でもポップスにすごく向いているような印象ですね。LUNA SEAのような激しいロックバンドの曲よりかは、綺麗に音を聴かせるような楽曲に対して凄く合いそうな印象でした。

Y:聴く楽曲にたいする相性は確かにありますよね。

P:ええ。いやーでも、変わりますね!(笑)

Y:変わるんですよ(笑)百聞は一聴に如かずといった感じで。
では、次はコチラのUNIVERSEいってみましょう。

P:これはメッキ加工していない方でしたっけ?

Y:いえ。Song’s-Audioのスペックによると、スーパーアニールという焼鈍処理を芯線に施したあとに銀メッキをしてあるとのことです。でもUNIVERSEの音色傾向として、いわゆる“銀のキャラクター”というのはあまり乗らない所に特徴があります。聴いていただくと分かると思いますけど。

P:(笑)え、分かるんですか?

Y:はい。「あーこれ全然銀っぽくないわ」って感じで(笑)

P:(笑)でも色々聴いてると、「これ銀の感じ」とか分かってくるようになるんですかね。

Y:そうですね、たぶんオーディオヲタクの域まで行けば分かってきます(笑)でも、オーディオ用に使われる金属メッキの中で、その「銀の感じ」のキャラクターが一番分かりやすいかも知れませんね。他の金属に比べて。

P:そっか。メッキの種類によっても音が変わってくるんですね。


[ピエール中野、UNIVERSEにリケーブルして聴く]

迫力のあるバンドサウンドを聴くんだったらこっちの方が良いという感じでした。中低域が充実し音にまとまりが出てきて,ロックなど激しい楽曲との相性の良さが凄く出ています。(UNIVERSE)


P:はい。ミッドレンジが持ち上がりますね。中低域が充実するので、こっちはロックに合いそうなガツンとくる感じがありました。

Y:そうですか。全体的なエネルギーバランスのようなものが下に…

P:下に、中低域寄りに来ていて、ドラムの聴こえ方もロックドラムとか激しいドラムに対しての相性の良さが凄く出ていました。

Y:なるほど。ではコチラのUNIVERSEはヴォーカルに関してはいかがでしたか?

P:女性ヴォーカルもいい感じに聴こえてきて。PN_universe_300.jpg
音質的にはさっきの(GALAXY)に比べてフラットでしたね。フラット寄りなんですけど、印象としては激しい楽曲に合う感じがありました。

Y:では、“凛として時雨”の曲では試聴していませんが、中野さんのChaotic Vibes Drumming (※1)により合うのはコチラのUNIVERSEですね。

P:うん。そうだと思います。綺麗で音の分離がいい音楽を聴くんだったらさっきの(GALAXY)だけれど、迫力のあるバンドサウンドを聴くんだったらこっち(UNIVERSE)の方が良い、という感じでした。純正のケーブルと比べても、より音にまとまりが出てくる感じでしたね。

Y:なるほど。音の解像度感の変化はいかがでしたでしょう?

P:それも上がった感じはありましたね。純正と比べると、いわゆるモヤっとした感じは取れて。中低域が持ち上がると、結構そのモヤっとする部分が出てしまいがちなんですけど、いい具合の所がキチッと丁度良く出ている部分がスゴイなと思いました。

Y:ありがとうございます。それでは、今聴いていただいたUNIVERSEの上位バージョンであるUNIVERSE PROにいってみましょう。

P:おお。上位バージョン。

Y:はい。GALAXYとUNIVERSEはハッキリとキャラクターの違いが出ていたと思うのですが、UNIVERSEとUNIVERSE PROはまた変化の仕方が違ってくると思います。
キャラクターはそのままに変わってくる部分がある。

P:そうなんですね。でも、やっぱ普段聴く曲によって、という感じですよね。ケーブルの選び方って。

Y:そうですね。なので、聴く楽曲は人それぞれ違うので、買う前にご自分のプレイヤーとお使いのイヤホンで試聴してからケーブルを選ぶことをオススメします。


[ピエール中野、UNIVERSE PROにリケーブルして聴く]



音がいきなり立体的になって、歌がガッと前に出てくる感じになりました。各楽器も浮き上がってくる感じになって、しっかりと聴こえて欲しい音が聴こえてくるようになる。(UNIVERSE PRO )


P:おお。音が立体的になりました。いきなり立体的になって、歌がガッと前に出てくる感じになりました。

Y:それスゴクいいコメントじゃないですか(笑)その表現、一語で伝わりますよ。立体的って。

P:うん、ちょっとビックリしました。特に歌が入ってきた時にそれをすごく感じましたね。でもって、それぞれの各楽器も浮き上がってくる感じって言うか。歌も出てくるし、曲全体もしっかりクリアになってる感じの印象があって…

「あ!変わるんだな」と。最初は、「これ分かるかな?」って感じだったんですけど、だんだん色々な楽器が入ってくると、これ前の(UNIVERSE)と全然違う、と感じました。

Y:アンサンブルが増えれば増えるほど、影響が出てきたと…

P:そうですね。それも解像度が上がっているからでしょうか、しっかりと聴こえて欲しい音が入ってくる、聴こえてくるようになっているので…これは結構スゴイすね!ガラッと変わりますね(笑)

Y:はい。比べると確かな変化があります。ip4s_universe_02_300.jpg

P:思っていた以上でした。

Y:ケーブルを変えて音が良くなったと感じる場合、「音質的に良い方向」と「音楽的に良い方向」っていうのがあったりします。クリアさや太さなど「音質的」な変化は、使う素材や芯線の太さによってある程度決まってくるんですが、聴こえてほしい部分を「音楽的」に向上させるには、いろいろな要素の相性が関係してきて、結構偶然の要素が強いんです。
そういう意味ではこのUNIVERSE PROはUNIVERSEに比べて、「音質的」と「音楽的」どちらもいい方向に行ってくれると思います。

P:なるほど。

Y:まあ正直言うとモノによっては悪い方向にいってしまうこともあって、例えば解像度が上がったのはいいけどバランス感が崩れてしまったり、ピークが出て耳ざわりになってしまったり、高域は抜けるけど低域が薄くなっちゃったりとか。ケーブルを変えることによるそういう音の変化は、こういったイヤホン用ケーブルに限らず、ラインケーブルでもマイクケーブルでもあるんですけども。

P:そうですよね。

Y:ちなみに、このUNIVERSE PROは具体的にはどういう楽曲に合うと思いますか?

P:これはどれも良かったですね。特にロックとテクノ、打ち込み系の音楽が凄く気持ちよく聴こえました。

Y:オールマイティに使える感じですね。

P:なんかね、面白いっすね!聴いてて楽しいです。コレ(UNIVERSE PRO) スゴかったですね。

Y::ありがとうございます。では、ラストのGALAXY PLUSいってみましょう。


[ピエール中野、GALAXY PLUSにリケーブルして聴く]



音が一番クリアに出ていて、綺麗な音楽と凄く相性が良い印象です。ニュアンスがすごくハッキリ出るようになって,意図がしっかり伝わってくる。凄く聴きやすいと感じました(GALAXY PLUS)

P:ハイ。これ、一番クリア! 綺麗な音楽と凄く相性がいいな、といった感じの印象でした。いわゆる女性ヴォーカルの伸びだったりとか、すごく良くなったと思います。
でもさっきの(UNIVERSE PRO)が迫力のある音楽に向いているのに対して、静かで綺麗で聴きやすい音楽に対して凄く合いました。色々な曲で聴いてみたんですけど、違いましたね。全然。

Y:それぞれの良さがある中で、このGALAXY PLUSは落ち着いた音楽向きということですね。

P:ええ。あの、結構ロー(低域)が強く出ちゃうと、苦手な人っているじゃないですか。聴いてて疲れちゃう、みたいな。そういう人にはこのケーブルがバッチリはまってくるんじゃないかな。凄く聴きやすいと感じました。

Y:全体的な解像度感の変化はいかがでしたでしょうか?PN_galaxy_plus_300.jpg

P:解像度感はいま試聴したGALAXY PLUSが一番だったかな、音が一番クリアに出ていたと思います。

Y:そうですか。個人的な印象ではあるのですが、このGALAXY PLUSは高域に艶というか、はっきり特徴が出てくる傾向があると感じています。ドラムの音でいえば、シンバル系、ハイハットの音などが綺麗に伸びて聴こえるような印象です。
そのあたりの響きの違いはいかがでしたでしょう?

P:そうですね。音のニュアンスがすごくハッキリ出るようになって、ドラマーの意図がしっかり伝わってくるような印象がありました。

Y:なるほど。

P:今まで聴いてきて、同じ楽曲でも、リケーブルによってガラッと印象が変わってくるっていうのが凄く面白かったですね。
見た目も使い勝手も、Song’s-Audioのケーブルのほうが圧倒的にいいですし。
ちょっと…「純正ケーブルって何だったんだろう」って感じになりますね(笑)

Y:(笑)リケーブルするという選択、楽しみ方というものを感じて頂けましたでしょうか?



特別感が出ますよね。純正のままよりもリケーブルして使っている方が。それによって自分の気分も高まっていくし、いろいろ自分で調べたり試したりする行為自体に価値がある。

P:はい。これだけ変わってくると、楽しいですよ。イヤーチップ交換でも結構音が変わるんですけど、それとは全然違うベクトルの変化の凄さがありました。
あと “特別感”が出ますよね。オリジナルの純正のままよりもリケーブルして使っている方が。それによって自分の気分も高まっていくし、音はもちろん、付けている感じとかも変わってくる。それで、いろいろ自分で調べたり、試してみたりして。そういう行為自体に価値があるし、そこに楽しさがあるので、是非試してみて欲しいと思いますね。Song’s-Audioは見た目もすごくいいし、ピュアオーディオのケーブルに比べたら価格もそこまで高くもないですしね(笑)手を出しやすい。ip4s_galaxy_plus_300.jpg

Y:交換ケーブルとして考えたらちょっと高いかも知れませんが(笑)
でもピュアオーディオ用のケーブルに比べたら確かに手を出せそうな金額ですよね。それに最近の傾向としては、このUE900とSong’s-Audioのリケーブルを合わせて購入するより高額な、いわゆるハイエンドクラスのヘッドフォン・イヤホンも次々に登場しているような状況です。

P:そうですよね。やっぱり、いい音のイヤホンってやっぱりみんなが求めていて、twitterなんかでも、オススメのイヤホンやヘッドフォンありますかってのはよく見ますし、誰だってポータブルで音楽聴いている人は、出来るだけいい音で音楽を聴きたいに決まってるんですよね。悪い音で聴きたい人はいるはずもないし。
だったら本格的に調べてみようかと思って追求してみると、こんなに面白い世界があるよ、っていうイイ流れが出来ているなと思います。

それに僕が最初に10proを知り始めた頃なんて、イヤホンにしても交換用のケーブルにしても、今ほどはそんなに出てなかったですよね。今では凄く選択肢が増えているのでいいですよね。しかも4本同時に試すって機会もなかなかなかったんで、今回“リケーブル”っていうのを体験してみて、ちょっとビックリしましたね。いい機会を頂いて、すごく楽しかったです。


※1) Chaotic Vibes Drumming ・・・ピエール中野氏監修のドラム教則本& DVD。入門編と実践編の2タイトルがラインナップ。(ピエールレコーズ/ Sony Music Associated Records 刊)

profile_a.jpg<ピエール中野 プロフィール>

凛として時雨 ドラマー。手数・足数を駆使した高度なテクニックと表現力で、豪快かつ繊細な圧倒的プレイスタイルを確立。サブカル的な独自の視点と卑猥なマイク・パフォーマンスでごく一部のファンから熱狂的な支持を得ている。ドラム・メーカーであるTAMAからは、日本人初となるシグネチャー・ドラム・セット発売、シグネチャー・スネアの予約即完売など、前例のない功績を残した。また、凛として時雨とは別に「CHAOTIC SPEED KING」という3人組即興ユニットでも活躍しており、ドラマーとしての可能性を模索し広げている。また、DJやコラム連載(リズム&ドラム・マガジンなど)、ヒップホップ集団「玉筋クールJ太郎」のメンバー、ギター/楽器小物の商品開発など、幅広く精力的な活動を展開している。


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TK(Vo&Gt)、345(Vo&Ba)、ピエール中野(Dr)によるスリーピース。
男女ツインボーカルから生まれる切なく冷たいメロディと、鋭く変幻自在な曲展開は唯一無二。プログレッシブな轟音からなるそのライブパフォーマンスは、冷めた激情を現実の音にする。

2002年埼玉にて結成。メンバーチェンジを経て現メンバー編成となる。
2004年、初の全国ツアーから2種類の自主音源を2000枚以上売り上げ、自主企画「トキニ雨」を開催するなど精力的なライブ活動を開始する。
2005年には自主レーベル「中野レコーズ」よりファーストフルアルバム「#4」をリリースする。2008年にはSony Music Associated Recordsへ移籍し、メジャー第一弾としてフォトブック付きの完全生産限定盤シングル「moment A rhythm」をリリース。2009年5月、メジャー初のフルアルバム『just A moment』リリース、オリコンウィークリーチャート4位を記録。11月には初の全国Zeppツアー「Tornado Z」を開催。2010年、全28本に及ぶワンマンツアー「I was music」ではSUPER FINAL としてさいたまスーパーアリーナでの単独公演を行う。同年5月にはブライトン(UK)で開催された「The Great Escape」への出演も含め、初のイギリスツアーを成功させる。
同年9月、4枚目のフルアルバム『still a Sigure virgin?』をリリース、オリコンウィークリーチャート1位を獲得した。
2013年4月、満を持して2年半ぶりのニューアルバム『i’mperfect』をリリース。


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