オーディオライター 野村ケンジがリケーブル

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今回、Song’s-Audioの各ラインナップそれぞれの音質傾向をより明らかにすべく、ヘッドホンから本格ホームシアターまで、幅広いジャンルをフォローするオーディオ&ビジュアルライターであり、ヘッドホンは毎年100を超える新製品を試聴し続けている百戦錬磨の評論家、野村ケンジ氏をお招きし、それぞれのモデルのディープな試聴をしてもらうとともに、音質に対するファーストインプレッションを中心に感想を伺ってみた。


試聴環境: <プレイヤー: iriver Astel & Kern AK100> → <各リケーブル> → <Sennheiser IE80>


野村(以下N): 楽しみです。まずはどれから聴こうかな。

担当Y (以下Y): では耳のウォーミングアップも兼ねて、まずはやはり純正ケーブルのノーマルバージョンを試聴して頂きましょう。あくまで、この音が“基準”の音になりますからね。

N: そうですね。


[Sennheiser IE80 付属の純正ケーブルで試聴]

N: うん。IE80の音(笑)。今まで何十回と聞き込んできたIE80の音ですね。当たり前ですが。

Y: 野村さんは紙面、ウェブ媒体問わずIE80のレビュー記事も結構執筆してらっしゃいますもんね。ではリケーブルいきましょう。まずはこちらのGALAXYからお願いします。


[GALAXYを試聴]

N: うん、いい。IE80の持っている特徴をあまり変えることなく、そのまんまちょっとエッジが立った感じ。あと、解像度感が確実にグレードアップしています。


[UNIVERSEを試聴]

N: うん。これたぶん、この音だと、「IE8じゃなきゃダメだ。IE80はダメだ。」って言っている(笑)ゼンハイザーファンも十分納得してくれそう。

Y: あ、やっぱりそういう人もいらっしゃるんですね。

N: うん。結構いますよ。知人の某オーディオ誌の編集とか。IE8って、人気が根強いんです。このUNIVERSEだと、ゼンハイザーのモニターらしい音になってくれる。ゼンハイザーらしさがちゃんと出てくるので、ストレートな音色のケーブルなのだと思います。

Y: そうですよね。今聴いてもらったGALAXYとUNIVERSEの2つの間でも、かなり明確なキャラクターの違いがあります。

N: そうですね。ビックリしました。


[UNIVERSE PROを試聴]

N: ちょっと一回、UNIVERSEの方に戻させてもらってもいいですか? 明らかにグレードアップしているのだけど、どの程度かをもう一回確認したいので。確実にグレードアップはしているのだけど、このキャラクターでそこまでクオリティ上げる必要があるのかな?というのを、ちょっと今感じたのね。

Y: うーん。なるほど。ではUNIVERSEに戻しましょう。


[もう一度UNIVERSEを試聴]

N: うーん。やっぱり、解像度感が全然違っている。やっぱあっち(UNIVERSE PRO)かな。

Y: そうですか。でもゼンハイザーらしさという観点から言えば…

N: それは絶対こっち(UNIVERSE)。ゼンハイザーらしいというよりはIE8らしいといった感じね(笑) 今IE80で聴いているわけなんだけど、IE80がIE8っぽくなったイメージでしょうか。
いわゆる「聴かせどころ」を心得ているというか、すごい“パスン”とフォーカス高めて聴かせる感じがありますね。

ただIE80の良さをキッチリ引き出してくれるのはこっちのUNIVERSE PROかな。

面白いよね。太さ、本数、撚り方が違うだけでここまでキャラクターが変わるなんて、とても興味深いです。

ただ、他ブランドのケーブルと比べても、Song’s-Audioのケーブルは格段に優位なところがいくつもありますね。キャラクターがちゃんと明確に出ているし、イヤホンに対してリスナーが好んでいるポイントが、ちゃんと包み隠さず前に出てきてくれているんじゃないかなと。

じゃ、最後のいってみようかな。(UNIVERSE PROを取り外す)


Y: ちなみにコネクタ部分とイヤホン本体との脱着の感じはいかがでしょう?

N: うん。かなりいい。不安感が全然ないね。


[GALAXY PLUSを試聴]

N: うん、これ。クオリティという部分では一番ですね。

今まで聴いてきた他の3種も、かなり良いなあという感じではあったんだけど、その中で…

GALAXYは解像度は上がるんだけど、もうちょっと音のバランスが揃ってもいいんじゃないかなって感じがしました。そしてUNIVERSEは出音の質はすごくイイんだけど解像度の高さがあまりない。そしてUNIVERSE PROはそこからグッと解像度があがって、IE80らしさがより表に出てくる。そしてこのGALAXY PLUSはね、ひとことで言えば「IE80じゃない音になる」。

Y: なるほど。完全に別モノになるっていうとこですかね。たとえば、ゼンハイザー製イヤホンのラインナップにおける現在の最上位機種の、IE800と比べての印象はいかがです?

N: そう…だね。IE800とキャラは多少近くなるかもしれません。ただ、そのくらいキャラクターが変わるぶん、購入を検討されるユーザーの方は、ちゃんと視聴して好きか嫌いか判断して欲しいと思います。

いっぽう、UNIVERSE PROはIE80の本来の力をより引き出してくれるイメージ。付属の純正ケーブルと比べても桁違いな音質なのですが、GALAXY PLUSは、高音域に少し銀ぽさが乗っているのかもしれません。

Y: ええ。特徴的なところとして、シンバルのハイハットの響きが非常に綺麗に聴こえるよう変化します。それでいて下にもキッチリ伸びる。低域の量感もしっかりあって、ハイエンドな音体験を体感できるケーブルだと個人的には感じます。

N: うん。これはGALAXYにも言えることなんですが、低域の解像度がすごく上がってくれる。そして、ローエンドもすごく伸びる。けれど、それ故に「ゼンハイザーっぽくない。」と感じる人がいるかもしれません。

ゼンハイザーぽさって、人それぞれ印象が違うかもしれませんが、僕のなかではまとまり感のある低域、といったイメージがあります。解像度感があって、ボトムエンドの伸びもそこそこあるのだけど、それを強調せず自然にまとめている感じ。

でも実は、こういったケーブル、特にこのGALAXY PLUSなど使うと、解像度の伸びも普段の印象以上にしっかり「ある」っていうのに気づかされます。

GALAXY PLUSは、低域の解像度が上がることに加えて、少し高域に銀に特有のキラッとしたキャラクターが乗っていますね。
でも、他ブランドの製品に比べて、銀っぽさがあまり強調されず、自然なまとまり感を持ち合わせているのには好感が持てます。乗ってしまう場合は、もっと如実に感じられるので。

UNIVERSE PROとの違いは、このケーブルの撚り方、構造の違いが音に反映されているのでしょうか?

Y: GALAXYとUNIVERSEの導体自体にはアニール処理されているかいないかの違いがあります。オヤイデ電気で扱っている製品で言えばPCOCCとPCOCC-Aの違いのようなものでしょうか。あとは芯線同士の組み方の構造が、UNIVERSE PROだけスパイラル撚りで、あとはブレード編みとなっています。
オヤイデ製品で言えば、あくまでこのケースはシールドのみなのですが、HPC-SEはカラーで構造に違いがあって、ブラックとレッドがスパイラル構造のシールド、シルバーのみが編み込み構造となっています。それでも音色には違いが出てくる。

N: そうですね。音色は結構違います。

Y: あとの違いは3.5mmのプラグ部分ですかね。

N: あ、そうか。そこは大きく変わっている部分ですね。今後、メッキやピンの素材などを変えたバリエーションがあってもいいかもしれません。

Y: はい。検討中です。プラグも素材やメッキを変えるだけでかなり音が変わりますね。特にイヤホンに直結しているリケーブルはダイレクトに違いが反映されます。同ブランドにしても、違う型番の機種かってぐらいリケーブルで音の傾向が変わってきます。

N: うん。電源ケーブルなんかと比べても、特にダイレクトに変わりますよね。イヤホンのリケーブルは。

でも、正直な話をすると、近年のヘッドホンブームを見て、“儲かりそう”と気軽に手を挙げてくるメーカーがとても多いので、リケーブル業界もいまやかなりの玉石混淆状況となりつつあると思うんです。

それはそれで楽しいんだけど、「ハズレを引くかもしれない」と思うと、ユーザーとしては、新興メーカーの製品に手を伸ばしづらかったりしますよね。
けれど、この「ソングス-オーディオ」の場合、実際の製品を目の前にすると、そんなイメージはたちどころに払拭してくれます。とにかく、仕上がりが丁寧で、製品に対する真摯な取り組みが、その外観からも感じられるんです。

たとえば、モデルごとにケーブルの太さや本数、撚り方も異なっているのは、音質を重視しなければただ面倒なだけでしょうし、耳に掛けるあたりがクルッと回り込んでいるあたりは、追加のスリーブや針金を使わないスマートな仕上がりになっています。こういった部分の本気さに、惹かれますよね。

そして4種類ともにキャラクターがしっかり主張されているから、それぞれの理想の“IE80/IE8”への音色チューニングを実現するために、ユーザーが選びやすいようになっています。なかなか、インパクトのある製品だと思いますよ。


k_nomura_prof.jpg<野村ケンジ プロフィール>

ヘッドホンから本格ホームシアターまで、幅広いジャンルをフォローするオーディオ&ビジュアルライター。なかでもヘッドホンは、毎年100を超える新製品を試聴し続けている。いっぽうで、6畳間に100インチスクリーンを設置、ステレオ用のTADモニターと7.1ch用のエラック50LINEを同居させた「ミニマムシアター」も構築中。


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Universe-IE_2.jpgUNIVERSE
Galaxy Plus-IE01.jpgGALAXY PLUS
Universe Pro-IE.jpgUNIVERSE PRO