素材から技術へ 

かつてない精度と技術で創り上げられた精密導体 “102 SSC”

精密導体 “102 SSC” 特長

  • 高度な製造管理を行った結果、導電率は 102.3 %IACS( 伸銅終了時)
  • 不純物の混入を極力避けるために、JIS C1011 に準拠した銅の中でもリサイクル銅を一切含まないバージン銅のみを使用
  • 素線の表面平滑性を高めるため、天然ダイヤモンドダイスを採用
  • ピーリング加工を施すことで伸銅に付着した不純物を 100%除去
  • 世界初、高密度異径導体 3E 撚り構造を採用(特許取得済み)
  • 2度にわたるアニーリング加工で、素線の機械的な応力歪を排除
  • 標準誤差許容値 ±8μm をはるかに凌ぐ ±1μm という加工精度の下、作り上げられた素線
  • 製造管理数値、メンテナンス、出荷日数など徹底した製品管理
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    ピーリング加工

    通常は洗浄によって表面に浮き出た不純物の除去が行われますが、”102 SSC” はμ単位で表面を削る、機械ピーリングによって表面に浮き出た不純物を 100%除去します。このピーリング加工を電気用銅線に用いる事は世界でも類がなく、日本が誇る加工技術がここにも冴えます。


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    3E 導体構造

    3E 撚り構造は同心撚り配列構成の一括集合撚り線導体で、3種類の異なる素線径を配置する事により、撚り線配列を緻密化。導体構成の細径化が可能となり、導体特性値の向上を図ります。この3種類の異なる導体径の素線はジオメトリックに配置され、素線間の空隙を最小限に抑え、素線密度の向上を果たします。更に撚り線外径のダウンサイジングと共に、安定かつ高精度な外径を保ち、撚り後の断面が真円という世界でも類を見ない導体構造です。


    世界最高峰の技術と品質で生産する

    “102 SSC” は特別な思いを込めて創り上げた導体です。“ 普遍的な材料を世界最高峰の技術と品質で生産する ” というコンセプトを掲げ、オヤイデ電気が自ら思い描いた導体なのです。独創性。革新性。そして熟練のクラフトマンシップ。既成にとらわれることなく、常に革新性を追求する。そして “102 SSC” は三洲電線の協力を得て誕生した導体です。

    常に挑戦を愛し、さらなる高みを絶え間なく追求する姿勢が、紡ぎ出される製品に唯一無二の存在感を与えるのです。過去へ の敬意は未来に対するビジョンを持つこと。歴史があるから現在があり、そして未来へと続くのです。私たちは単なる価格だけの高級品を造るつもりはありません。最上級の素材とその素材を最大限に引き出す匠の技が融合した時、本物の高級品が誕生するのです。


    素材から技術へ かつてない精度と技術で創り上げられた精密導体“102 SSC”

    私たちはPCOCC-Aという最上級の素材によって、幾多もの銘品を生み出しました。それは、オヤイデ電気が創り出す製品群の根幹でもあり、日本で製品を創るというプライドの象徴でもありました。ところが2013年冬、PCOCC-Aの生産中止が突然報じられます。この一報はオヤイデ電気のケーブル創りの根幹を揺るがす出来事でした。深慮の末、私たちが下した決断とは、自らの手で“新しい導体を創る”という事。これはオヤイデ電気の自らへの挑戦。かつて自らの手によって 創り上げた製品に対する挑戦。この常に挑戦し続ける姿勢こそオヤイデ電気のスピリット。かくて、1年半の時間を費やし、自らの手で創り上げた導体 “102 SSC”が誕生したのです。

    私たちの導体を創る旅は、まずコンセプトづくりから始まりました。そこで、私たちは“普遍的な材料を世界最高峰の技術と品質で生産する”というコンセプトを 掲げました。

    これまでのオヤイデ電気は、大手電線会社からPCOCC-AやLC-OFCなどの導体供給を受け、製品作りを進めてきたのです。しかし、刻々と変化する社会情勢の中、市場規模が小さく非効率な素材は、PCOCC-AやLC-OFCのように突然の生産中止となり得ます。これを踏まえて私たちは、安定供給がなされ、かつ普遍的な銅母材を使用する事で、時代の潮流に流されない製品が出来ると考えたのです。

    “102 SSC” のベースには、国内で精錬され、 JIS C1011 に準拠した普遍的な銅母材を使用。そしてC1011の中でも、リサイクル銅を一切含まない銅母材、すなわちバージン銅を指定しました。これは不純物の混入を極力避けるためです。物理特性としては、リサイクル銅もバージン銅も数値的に変わりありません。しかし、オヤイデ電気はあえてバージン銅にこだわりました。見えないところへの徹底したこだわりは、安定した性能と、品質の高い製品を送り出すというオヤイデのフィロソフィーでもあるからです。私たちが目指したのは、単に基準値を満たすモノ作りではなく、素材の持つ性能を最大限に引き出す事なのです。

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    国内で精錬された “102 SSC” の銅母材は、国内でも高い加工技術を有する伸銅会社に持ち込まれ、伸銅されます。その際、この銅母材は一般的な8mmの荒引線に止まることなく、段階的に約1mmの細さの銅線にまで伸銅されます。これは後の細線化における伸線工程を減らす事で銅線の機械的応力歪みを軽減し、銅の結晶構造の劣化を最小限に抑えるのが目的です。



    ところで、通常の伸銅工程では酸洗浄によって、銅線の表層に浮き出た酸化物などの不純物を除去します。しかし、この方法は洗浄液の残留を生じやすく不純物を完全除去するには至りません。これに対して “ 102 SSC” では、μm単位で高精度に制御されたピーリング加工によって銅線の表層を削り取り、銅線の表層に浮き出た不純物を100%除去します。このピーリング加工を電気用銅線に用いる事は、世界でも類がありません。私たちのこだわりがここにも込められているのです。

    次に、銅線の表層の不純物を 100% 除去した銅線に対して、伸銅工程による機械的応力歪みを除去するためのアニーリングを行いますが、そこにも熟練のクラフトマンシップが存在します。 “102 SSC” というオーディオ用導体の性能を最大限まで引き出すために、機械的強度、導電率、再結晶化などを考慮し、幾度となくテストを繰り返して得た最適な温度と時間調整のもと、アニーリングが施されます。その結果、アニーリング終了時におけるこの銅線の導電率は102.3%IACSを示します。私たちの導体を “102 SSC” と命名した所以がここにあります。

    アニーリングが施された銅線は、すぐさま数々の検品が行われ、酸化防止のための厳重な梱包がなされた後、伸線会社へ向けて2日以内に出荷されます。銅線の出荷においては一般的に、日数制限を設けることは稀です。しかし、私たちは “102 SSC” の導体表面を劣化させないために、このシビアな出荷日数制限を設けたのです。このように、タイムロスを最小限に抑え出荷された銅線は、次の伸線工程においても同様に、銅線の鮮度を保つため、入荷から2日以内に伸線を開始するよう設定されています。

    そしていよいよ伸線工程と撚り加工。これらは “102 SSC” の核心部ともいえる最終工程です。 “102 SSC” の製作にあたり、私たちは“電気信号は導体表面を流れる”という原点にフォーカスし、このプロジェクトを進めてきました。私たちの目指すものは非常に高い次元で、常識では考え得ない精度で製品を創り上げる事でした。私たちがイメージしたものは“PATEK PHILIPPEやVacheron Constantinのような、芸術の域にまで達する精密導体”。そして、私たちが目指す高い次元で の要求に応え、それを生産可能にしたのは、愛知県にある三洲電線でした。三洲電線は昭和23年創業の歴史ある伸線会社で、国内外でも屈指の技術力を有し私たち日本人が誇る職人集団です。彼らの技術と情熱をなくしては “102 SSC” は誕生し得ませんでした。

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    まず、私たちは三洲電線と共同で、素線表面の平滑加工と、加工精度の 素線表面写真向上に取り組みました。銅線を細線化する過程には、ダイスという器具を用います。一般的に電気用軟銅線には、経済性と効率性を鑑みて人工ダイヤモンドダイス(焼結ダイヤモンドダイス)が用いられますが、私たちは敢えて平滑加工を可能にする天然ダイヤモンドダイスを採用しました。天然ダイヤモンドダイスは、人工ダイヤモンドダイスに比べてワ イヤー潤滑性に優れ、均一な減面加工、最小限のダイス引抜力などの特色を有し、主に極細線径のマグネットワイヤーの製造に用いられます。

    また、私たちは加工精度についても、素線の外径寸法許容値を±1μmという数値目標を設定。それを実現可能にしたのは、天然ダイヤモンドダイスの採用と、三洲電線が長年培ってきた外径サイズの均一化技術です。この細線化の作業工程では、単線一条において全長にわたり毎秒1,600回もの測定能力を有する、三洲電線独自のワイヤーモニタリング監視システムを用いる事で、ミクロン単位の精度で製造管理を行っています。さらに、この天然ダイヤモンドダイスは非常にデリケートなため、メンテナンスにも細心の注意が払われています。 “102 SSC” 専用のダイスは作業終了毎に内穴壁研磨 を行い、1μm未満のダイヤモンドパウダーで仕上げられます。この “102 SSC” 専用ダイスは、使用時間及び距離による交換設定がなされ、セット前に必ず顕微鏡によるダイスの磨耗やひび割れ、カケなどの検鏡が行われ、不備があった場合、ただちに交換されます。その交換頻度は通常の伸線に比べ10~20倍というコストパフォーマンスの悪さですが、精度と品質を高めるために必然的に行われます。このようにして作り上げた素線は、 JIS C 3102 に規定された電気用軟銅 線の外径寸法の許容値±8μmをはるかに凌ぐ、±1μmという従来では実現し得なかった精度と、他に類を見ない平滑加工で素線を作り上げる事に成功しました。これにより、特別に表面が平滑化された銅(Special Surface Copper)というイニシャルをとって、私たちはこの導体を “102 SSC” と命名しました。

    こうして極限まで高められた精度で作り上げられた素線は、加工途中で発生する機械的ストレスを取り除くため、再びアニーリングが行われます。このアニーリングも、銅の粒子の均一化及び安定した機械強度を考慮した上で、各々の素線径に応じて幾度となく軟化実験を行い、素線径に合わせた製造管理数値を設定しています。 こうして作られた素線は、異なった素線径であっても、銅の粒子構造と機械的強度の同一化が図られており、異径の素線を撚り合わせた場合でも安定した特性を示します。

    長かった導体を創る旅も終わりに近づきます。

    これまでオヤイデ電気では、ケーブルによって集合撚り、同心撚り、ロープ撚り、円筒構造、単線などの導体構造を採用し、オリジナリティ溢れる製品を世に送り出してきました。しかし、ケーブル製造における導体構造は既に確立されたものがあり、導体供給を受けていた私たちも“導体構造の創造”という発想には至りませんでした。 “102 SSC” の生産を行うためにパートナーシップを締結した三洲電線は、その卓越した伸線技術はもとより、素線の撚り合わせ技術においても 論理的で独創性のある企業です。私たちは“普遍的な材料を世界最高峰の技術と品質で生産する”という 102 SSC導体のコンセプトを明確にした上で、三洲電線とのディスカッションを開始。そこで私たちは、三洲電線が精密な撚り加工の特許技術を有した、私たちが理想としていたハイスペックな要求にも応えうる、確固とした技術を持つ職人集団である事を知ります。

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    “102 SSC”の導体構造は、三洲電線が特許技術をもつ3E撚り構造を、世界で初めて採用(*)。この3E撚り構造は、同心撚り配列構成の一括集合撚り線導体で、3種類の異なる素線径を配置する事によって撚り線配列を緻密化。これにより導体構成の細径化が可能となり、導体特性値の向上が図られます。この3種類の異なる線径を有する素線がジオメトリックに配置された3E撚り導体によって、素線間の空隙が最小限に抑えられ、素線密度の向上が果たされます。また、撚り線外径のダウンサイジングと共に、安定かつ高精度な外径を保ち、撚り線の断面が真円という、世界でも類を見ない導体構造を実現しています。これら一連の撚り加工は、徹底した製造管理と品質管理の下に行われ、一つ一つに地道で手間のかかる工程を経て “102 SSC” は誕生したのです。そしてこれらを可能にしたのも、誇りある日本のクラフトマンシップがあるからなのです。

    “102 SSC” は特別な思いを込めて創り上げた導体です。“普遍的な材料を世界最高峰の技術と品質で生産する”というコンセプトを掲げ、オヤイデ電気が自ら思い描いた導体なのです。独創性と革新性、そして熟練のクラフトマンシップ。既成にとらわれることなく、常に革新性を追求する。 “102 SSC” は三洲電線の協力なくしては創造し得なかった導体なのです。

    常に挑戦を愛し、さらなる高みを絶え間なく追求する姿勢が、紡ぎ出される製品に唯一無二の存在感を与えるのです。過去への敬意は未来に対するビジョンを持つこと。歴史があるから現在があり、そして未来へと続くのです。私たちは単なる価格だけの高級品を造るつもりはありません。最上級の素材とその素材を最大限に引き出す匠の技が融合した時、本物の高級品が誕生するのです。

    (*)特許公開2014-060061 特許公開2009-266670 特許公開2009-054410 特許公開2008-021603 特許公開2007-317477


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